いんたびゅー

第1回 監督 山本寛さん

 

Q.原作をはじめてお読みになった時の感想をお聞かせください。

第一印象は「シンプルさ」ですね。大仰な仕掛けやエキセントリックな設定もなく、よくあるベタなアイディアの羅列に見えるのですが、それが単調さを感じさせない。構成・コマ割りがとにかく精緻でウェルメイド、古典作品を読むかのような印象を受けました。じっくり取り組んでみると隠れたところに難しい仕掛けはいっぱいあったんですけどね。女性作家ならではのセンシティヴィティも感じました。
それから少女の下半身への拘りですね(笑)。エロスを充溢させながら、厭味を感じさせないんですよ。やはり原作者が女性だというのもあって、キャラに独特の艶があるんですよね。

Q.本作品の魅力はどこにあると思いますか。

シンプルで堅牢な構成、女性作家ならではの細部の繊細さ、それとフトモモですね。

Q.映像化するにあたって工夫している点や、苦労している点についてお聞かせください。

とにかくシンプルに作ろうと。余計なことは一切しない、必要最低限の語彙で語り切るということを考えています。原作ではそれをとてもスマートにこなしてらっしゃるので、 感心しつつも、どうやったらアニメでこれが再現できるのか、頭を悩ませております。シンプルに作るというのは本当に難しいな、と感じています。モーツァルトを演奏するのが一番難しい、みたいなものです。

Q.アニメオリジナルの要素は何か考えておりますでしょうか?

原作はあくまで漫画の文法で書かれてあり、それをアニメに置き換えるとなると、たとえば時間というものが発生しますから、時間軸をしっかり設定しなければならない。するとその分の補足や修正が生じる訳です。ですから「原作から引くことはしないが、足すことは考えたい」というのを構成会議の時から言っておりました。原作の流れを補う意味でのプラスアルファ的要素は入れようと考えています。ただ原作の改変や改悪のような印象は与えないよう気をつけています。

Q.「かんなぎ」メインキャラクターの魅力についてお聞かせください。

御厨仁…普通の男子です。ただ近年のアニメの主人公によくある流されやすい受身的な男子ではなく、自分から積極的に自分を作っていこうとする、骨太の男子です。

ナギ…ツンデレでじゃじゃ馬な神様なのですが、神としての多重性を秘めているところが興味深いです。
この設定はいろいろな意味を包含していると考えますので、やはり特に丁寧に描いていきたいですね。

青葉つぐみ…本当に愛らしい、積極的な意味で普通の女の子ですね。メインキャラの中では実はもっともリアルな、生々しいキャラクターではないでしょうか。

ざんげちゃん…女子キャラの中ではもっともマンガっぽい、賑やかしキャラとして位置づけられていると思いますが、その立ち位置を逆手に取って大暴れして欲しいですね。

Q.お気に入りのキャラクターや、注目してほしいキャラクターについてお聞かせください。

秋葉と貴子ですね。それぞれ男のオタク代表、腐女子代表のように設定されていますが、巷で流布されているカリカチュアライズされたオタク像・腐女子像ではなく、非常に共感しやすい等身大のナチュラルなキャラクターとして生き生きと振舞っていると思います。私もこの二人には自分や知り合いを重ね合わせて「あー、いるいる」と妙に納得してしまいます。特に貴子の天然さは可愛いですね。

Q.最後に、ファンに向けてメッセージをお願いします。

あちこちで言っていますが、変な癖やトリックでカルトな興味を引く作品ではなく、むしろ老若男女いろんな方々に楽しんでいただけるような、シンプルな楽しいラブコメにしようと思います。スタッフ一同がんばりますのでご期待ください!